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廃校から始めようpart.2 地域を詰め込んだふわふわおやき
「廃校から始めよう」は、令和5年(2023年)3月で廃校となった旧野田小学校の校舎で、実施されているプロジェクトについて紹介するシリーズです。
前回のpart.1では「教室で行う農業」としてキノコ栽培を取り上げました。
今回は、「教室で作るおやき」です。
パン職人と障害福祉サービスB型事業所の利用者で作る、豊中市で栽培された野菜も使って地域を詰め込んだおやきを紹介します。
おやきがつなぐ地域の輪
寒い冬に頬張るアツアツのおやき。想像するだけでも心も体も温まりそうです。豊中市にはそんな美味しいおやきを教室で作っている人たちがいます。
「キッチンラボ100」は旧野田小学校校舎を利用し、未来100年制作合同会社が始めた事業です。同社は障害福祉サービスB型事業所の自主事業を行う就労支援拠点として設立されました。
また、おやきの具には豊中市で作られた野菜や、同じく教室を活用して作られているキノコも使用されています。
どのようにおやきが作られているのか、「キッチンラボ100」を取材した様子を写真とともにお届けします。
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教室を訪ねると、CEOの矢野さんをはじめ、パン職人の経歴を持つラボ・マネージャー漆谷さん、スタッフとして働く利用者さんが迎えてくれました。
教室内は明るい雰囲気で、実際におやきを作る過程を見せてもらいながら、お話を伺いました。
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——このプロジェクトを始めたきっかけは?
障害福祉サービスB型事業所として事業の安定を図るためにも、より収益を上げることができる自主事業に取り組む必要性を感じていました。
その思いを実現できる場所を探していたところ、豊中市が旧野田小学校の跡地を利活用する事業者を探していると知りました。
この場所であれば、地元の人や地域企業と連携しながら自主事業を進めていけると感じ、今回のプロジェクトを始めました。
——なぜおやきの製造だったのですか?
ラボ・マネージャーの漆谷さんがパン職人なので、当初はパンやフォカッチャを作る予定でした。
ただ、よく調べてみると、ここが元学校だったたのでパンを焼くオーブンの使用電圧や電力に耐えられないことが分かったんです。
そこでオーブンを使わなくても作れるものとして、漆谷さんが提案してくれたのが「おやき」だったんです。
——早々の方向転換、大変でしたね
そうですね、でも、ここで製造を始める以前にも、事業所がある庄内西町のお祭りでおやきを販売したことがあるんです。
事業所の前で作って売ってみたところ大人気で。たくさんの人が食べてくれました。その時に「どこで売ってるの?」「もっとあれば良いのに」というお声もいただいていたので、上手くいくのではないかなという予感もありました。
おやきはホットプレートで焼くことができ、教室の中での作業にも問題がなかったので、商品として展開が始まりました。
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ふわふわのおやきができあがるまで
——おやきの仕込みはいつされていますか?
昼ごろから生地の仕込みをしています。生地を練っていく最初の作業からこの教室で行っていて、その日に製造するおやきは当日仕込んだ生地を使っています。
うちのおやきは生地に特徴があってとてもふわふわなんです。甘みもあってまるでパンみたいなので、生地だけを食べても美味しいと思います。
——今からされるのはどういう作業ですか?
生地を計って切り分け伸ばしていく作業です。スケーラーも使っているので均等な大きさにできあがります。
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伸ばした生地の中に具を入れていきます。今日はチーズ味を作っていきます。味は今販売しているもので11種類あります。やはり野菜の旬もあるので、季節ごとに新しい味を登場させます。
——11種類もあると悩んでしまいますね。人気の味はありますか?
意外かもしれませんが、どの味にもファンがいて売れ行きにあまり違いはありません。ただ、チーズ味は小さいお子さんからご高齢の人まで一緒に楽しんでいただける味なので、購入される人も多いです。
あとは変わり種の味にも挑戦していて、この間はやきそば味も作ってみました。ボリュームも満点で、想像以上におやきの生地とマッチしていて美味しい仕上がりになっています。
——教室で作ったきのこを使っているものもあると聞きました。
そうですね、隣でキノコ栽培の活動をされているONE TOYONAKAと一緒に作り上げることができて嬉しかったです。とても美味しいおやきに仕上がりました。
また、きのこ以外にも豊中市の事業者が栽培した野菜を使ったおやきも作っています。
同じ学校の空き教室で事業を行っている方々とも、仲間意識ができてきました。隣の教室はおやきを作る事業所が入っていて、先日はうちで作ったキノコを使用したおやきを試作してもらいました。私も食べてみてキノコと生地の組み合わせは意外でしたが、すごくマッチしていて美味しかったです。地域を盛り上げるためにも、いつかは旧野田小学校全体でのイベントなども開催したいと思っています。
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上の写真のおやきに使用しているさつまいもは、豊中市で収穫されたものなんです。今後は季節毎に豊中市で育った野菜を使っていくことができればと考えています。
具を包み終わったので今から焼いていきます。
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——焼き始めると途端に甘い香りが広がりましたね!
これから両面をじっくりと丁寧に焼いていきます。美味しそうな焼き色が付きつつ、しっかりと火を通すことが大切です。
このおやきの「ふわふわ」感をより生かすため、新しい焼きかたも研究しています。やはり美味しく食べてもらえると嬉しいので、より柔らかく、満足度の高いおやきづくりをめざしています。
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焼き上がりがましたね。割ると中からチーズが溢れてきますよ。
焼きたてはもちろん美味しいですが、家で温め直していただいても美味しく食べていただけます。
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地域とともにこれからも
——おやきはどこで購入できますか?
事業所のほか、地域のイベントなどでも販売しています。
特に、近くの庄内コラボセンター・ショコラで毎月第4火曜日に行われている朝市では、庄内に住む人たちと交流しながらおやきを販売しています。
やはり、地元の人なので旧野田小学校に作業場があると伝えると、「子どもが通っていた学校です。そこで作られているなんて驚きました」と話してくれる人もいて楽しいです。
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——将来どのように事業を進めたいですか?
まずは、より多くの人におやきを食べてもらえるようにしたいです。そのためにはいくつか課題はありますが、少しずつでもおやきを販売できる先を増やしていければと思います。
また、生産量を増やすにあたっては人手も必要になるので、より多くのB型事業所利用者に働いてもらう機会が増えるのではないかと考えています。
加えて地域の企業や農家の人とも連携して、豊中市で収穫されたものを詰め込んだおやきを作っていきたいです。おやきづくりを通じてつながり合い一緒に商品開発を行うことで、豊中市ならではの魅力ある商品を生みだし、地域の活性化につなげていきたいです。
取材後記
前回のきのこの取材では、その菌床の迫力に圧倒されましたが、今回は、想像していたパン工房とは違った明るく優しい雰囲気があり心が和みました。皆さん和気あいあいと作業され、何気ないやり取りの中から新しい味や調理方法が生み出されていることを知るなど、取材中は驚きの連続でした。
実際におやきも食べてみて、教室で作られているなんて信じられないクオリティとあまりの美味しさに、口に運ぶ手が止まりませんでした。話の通り生地がこれまで食べたおやきと違っていて、そのふわふわとした食感は忘れられません。
豊中市の食材を使ったおやきの製造や商品開発を通して地域がつながっていく、庄内発の豊中市の新たな魅力が生まれていくことに私自身も期待で心が躍ります。
これからも、他の旧野田小学校の空き教室を活用した事業についてご紹介していきますので次回もお楽しみに。
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