妖怪やお地蔵さんが主人公 豊中の民話の世界
夏といえば?かき氷、風鈴、花火などさまざまな風物詩の一つとして、怖い話や怪談もあります。四谷怪談や播州皿屋敷のお話をご存じの方もいらっしゃるでしょう。
豊中にも、妖怪が出てくるちょっと怖いお話や不思議な体験など、古くからの伝説や物語が残されています。
さあ、地域で語り継がれてきた民話の世界にご案内しましょう。
豊中の伝説と昔話
大くもの松
高川、天竺川は、豊中市域を南北に流れる河川で、堤防の所どころに今も松並木が残っています。小曽根付近の両河川の間の距離はおよそ800メートル。ここに巣をかけるとは、よほど大きなクモの妖怪だったのでしょう。
わしはいわぬがおまえは絶対いうな
大阪・中津から能勢・妙見山までを結ぶ旧能勢街道は、豊中市域ではおおむね今の国道176号沿いを通り、豊中駅のあたりから刀根山の丘陵に上がっていきます。その一番高い所を通るあたりは刀根山峠と呼ばれていたそうです。
仏飯をいただいてガタロに勝った子ども
ガタロ(カッパ)は村のどの池にもすんでいて、子どもが一人で池に泳ぎにくると、池の底から出てきて相撲をとろうと誘います。ガタロは体は小さいけれど、頭の皿に水があると強く、どんな子どももかないません。子どもを相撲で負かすと、池の底に引きずり込んで生き血を吸うのだと言われていました。
民話をより身近に感じてもらうために
これらのお話は、豊中市出身の元小学校長で郷土史家として活躍された鹿島友治さんの著書「豊中の伝説と昔話」(昭和50年(1975年)、自費出版)から選んだものです。鹿島さんが郷土関連の書物から集めたり、地域の古老に聞いたりして採集した80話のほか、付録として箕面、池田、能勢の25話も掲載されています。
カッパや幽霊が出てくる話、キツネやタヌキに化かされたという笑い話、村の名前の由来についてなど、豊中に古くから伝わってきた説話を記録した、貴重な資料です。
これを参考に、平成5年(1993年)5月から平成7年(1994年)4月にかけて、豊中市の広報誌「広報とよなか」で「都市(まち)の語りべ 子どもに語る民話」と題して24話を連載しました。
民話は人から人へ、口伝えに受け継がれていくものです。
広報誌への掲載にあたっては、鹿島さんご遺族のご承諾をいただき、堀田穣さんと柴藤愛子さんのご協力を得て「語り」やすいよう脚色を加えています。また、幅広い年齢層に親しんでもらえるよう、大沼きょう子さん、法西朋子さん、橋本憲治さんの挿絵を添えました。
当時の広報担当職員によると、「大くもの松」を掲載した時には、「大くもの絵が怖くて、夢に出てくる」と市民から電話がかかってきたこともあったのだとか。
その後、平成9年(1997年)3月に市ホームページを試行的に開設し、平成11年(1999年)4月から本格的に運用を進めるなか、関係者の皆さんのご協力により「都市の語りべ」を市ホームページに掲載することに。
堀田さん、柴藤さん、豊中おはなしの会の皆さんに実際に読み語りをしていただき、その音源とともに公開しました。
今回、柴藤さんに語りについて伺ったところ、「母から聞いた話が私の原点です」。子どもの頃、母親が語る話を繰り返し思い出し、想像を巡らせていたのだそうです。長年、子ども文庫やおはなし会の活動に携わり、大勢の前で語る時でも、子どもたち一人ひとりの顔を見ながら、お話を手渡していくように話すことを大切にしています。「これは子どもたちに教わったんです。ある時、『この間、僕に話してくれたお話を聞かせてあげて』と、友達を連れて参加した子がいました。自分に話してくれたと感じることで、伝わっていくのだと気づきました」と、語りの魅力を教えてくださいました。
農村から都市へ、時代の移り変わりとともに、河童やキツネの存在が語られることも少なくなりましたが、この機会に、豊中の民話に触れてみてはいかがでしょう。夏休みの自由研究や地域探求のテーマとして調べてみると、新たな発見があるかもしれません。
数々のお話を、それを伝えようとした先人の思いとともに、どうぞお楽しみください。