見出し画像

今「子育てしやすさNO.1」を掲げる理由

みなさん、こんにちは。
豊中市は、令和5年(2023年)9月に「子育てしやすさNO.1」を掲げ、こども政策をまちの発展・成長戦略として充実・強化していくこととしました。
今回は、なぜ「子育てしやすさNO.1」を掲げたのか、その理由や想いをお伝えしたいと思います。


1.なぜ「子育てしやすさNO.1」を掲げたのか

まず、豊中市が「子育てしやすさNO.1」を掲げた背景についてお話しします。
国の令和4年(2022年)人口動態統計では、日本の合計特殊出生率は過去最低に並ぶ1.26、出生数は77万人となっており、統計開始以降初めて80万人を割り込む状況となりました。
少子化は極めて深刻な状況となっています。
その原因はどこにあるのか。
今の若者は、どのような状況に置かれているのか。
議論は、ここからスタートしました。

1-1 若者の想い・・・

(1)「所得や雇用への不安から結婚・子育ての将来展望を描くことができない」
一昔前までは、日本では年功序列で年齢とともに所得があがるという仕組みが一般的だったのではないでしょうか。この場合、ライフステージにそって所得が増えていく自らの姿をイメージすることができ、将来の人生設計がしやすかったといえます。
現在の給与水準は、長く続くデフレ社会において他の先進国と比べて低くなり、また、30年間ほとんど伸びていないという事実。そのなかで就職氷河期と呼ばれる時期があり、若者の雇用が大きな影響を受けた事実。
こうした時代背景のもと、所得や雇用への不安から将来展望を描くことができない…。
そんな状況に陥ってしまったのではないでしょうか。

G7各国の賃金(名目・実質)の推移のグラフ
厚生労働省「令和4年版 労働経済の分析─労働者の主体的なキャリア形成への支援を通じた労働移動の促進に向けた課題─」の「コラム1-3我が国の賃金の動向」より
新卒就職率の推移のグラフ
内閣府「日本経済2019-2020」の「第2-2-2図 新卒就職率の推移」より

(2)「子育てしづらい、子育てと仕事を両立しにくい」
共働き世帯が全体の75%
近年、働き方改革が叫ばれ、長時間労働の是正や育児休業制度の充実など国をあげて子ども・子育て政策を強化しようとする動きが大きくなっています。そのような中、各種の調査をみると、子育てをしながらキャリアを継続することは難しいと考え、子どもを生み、育てることをためらう状況にあることがうかがえます。また、家族のあり方も大きく変わるなか、身近に頼ることができるところが少ないことから生じる孤独感も子育てに対する不安要素となっていると考えられます。

共働き等世帯数の年次推移のグラフ
厚生労働省「令和4年版厚生労働白書-社会保障を支える人材の確保-」の「図表1-1-3共働き等世帯数の年次推移」より
子育てにおいて大変だと思うことの調査結果
日本財団 1万人女性意識調査 第4回「少子化と子育て(少子化を背景とした女性の子育て意識)」調査報告書(2023年5月)の「子育てにおいて大変だと思うこと」より

これらを裏付けるように市の調査では「子育てに関して不安や精神的な負担を非常に感じる・どちらかといえば感じる」と答えた方が38.3%にのぼっています。

子育てに関して不安や精神的な負担を感じるかについての調査結果グラフ
豊中市「豊中市子育ち・子育て支援に関するニーズ等調査 結果報告書(平成31年(2019年)3月)」の「問30 子育てに関して不安や精神的な負担を感じますか」小学生保護者回答より

子どもを生み育てることにネガティブな考えをもたざるを得ない現状は、経済的負担もさることながら、精神面・肉体面の不安・負担も、その大きな要因となっていると考えられます。
共働き世帯にとって、ライフステージに応じた生活設計を描きやすい環境に加え、仕事か子育てかではなく、仕事も子育てもできる環境を整えていかなければなりません。

ひとつめの所得・雇用の不安は、いわば経済の問題です。若者の所得水準を引き上げたり、雇用制度を変えるなど、経済的な基盤づくりに関しては、その多くは国レベルで全国一律的に対応していかなければならないものです。自治体として注力すべきこと、それは共働きで共にキャリア・所得をアップさせながら子育てができる環境をつくるということではないでしょうか。
自治体レベルでもできる直接的な経済的支援策としては現金給付があります。
しかし、現金給付という手法は、行政と市民の関係が「送る→受ける」の単線的なものにとどまり、何よりみなさんが「十分だ」と思える水準で給付を行うことは現実的には困難です。また、現金はあっても何か問題が生じた際に“拠りどころ”となる場やサービスがなければ、解決しない問題も数多くあると考えられます。

ふたつめの社会や制度への不安も国レベルで社会全体の意識・制度を変えていかなければならないものです。しかし、自治体レベルにおいて、それぞれの地域ごとに地域ならではの課題に応じて、きめ細やかな施策・サービスを講じることによって不安や負担を和らげることができます。また、そのサービスを考え、実行する場合、行政、民間、市民、地域との間に多種多様な関係性が自ずと生まれます(少なくともこういう関係性がなければ十分なサービスとはなりにくい)。

1-2 イコール地域づくり

豊中市では、このように考え、“子育てしやすさ”を追求する取組みについては、基本的には現金の給付よりも、サービスの量・種類・質を拡充することによって子育ての環境を変え、良くしていくということに力点を置いています。保護者が過度な使命感や負担感を抱くことなく、子育てに向き合えるよう、社会全体で保護者の子育てを支えていくという「子育ての社会化」を進めていく。
これが軸となる考えです。
この点において、子育てしやすさNO.1というプロジェクトは、まさに地域づくりそのものといえます。
子育て支援施策を充実させることで、喫緊の社会課題に対応するだけでなく、地域づくりを通して、地域社会の持続可能性を切り拓くことにもなります。
子育てしやすさNO.1を掲げ、社会的課題に対応していくこと自体が結果として豊中の発展・成長につながる。
これが豊中市の描く戦略です。

2.何をやろうとしているのか

では具体的にどのようなことをするのか。
ここでは取組みのエキスを紹介します。

2-1 取組みの3つの柱

(1)「小1の壁」の解消
まずは、子育てか仕事か、の二者択一ではなく、子育ても仕事も両方を選択することができる環境をつくる。
これが基本となります。
子どもが小学校に入学するライフステージにおいて、保護者が築き上げてきたキャリアを継続できるよう共働き・共育てをサポートする取組みを進めます。

小1の壁を打ち壊すイラスト
「小1の壁」の解消

(2)教育の質・機会をハイレベルに
豊中市は、高い交通利便性と優れた住環境から良好な住宅地として多くの子育て世代の方々に選ばれ、また、教育・文化に対する市民の高い関心から文教都市として発展してきた経緯があります。
“文教都市”は豊中の強みです。
価値観の多様化を背景に、社会全体が画一的な公平から個別最適へ流れを大きく変えてきました。この流れのなかに公教育もあります。このため、デジタルを大胆に活用し、子どもたち一人ひとりの個性や学習状況を踏まえた、よりきめ細やかな指導・サポートへ公教育を変えていきます。

タブレット端末で学習する子どものイラスト
教育の質・機会をハイレベルに

(3)子ども・子育てをまるごと支援
すべての妊産婦・子どもとその家庭をサポートする「はぐくみセンター」を令和5年(2023年)4月に開設しました。令和7年(2025年)には「児童相談所」も新設する予定です。
これらは中核市である豊中市だからこそできることです。
この2つの機関を核に、全市レベル、中学校区レベル、小学校区レベルの3層構造で、漏れなく、きめ細やかなサポートの“網”を張り巡らせていきます。
“制度あってサービスなし”とならないよう、身近なところに拠り所があり、網目の細かい支援体制・サービス体系を創り上げていきます。

子育て世帯を包み込むイラスト
子ども・子育てをまるごと支援

詳細は令和5年(2023年)9月に公表した「子育てしやすさNO.1」をご覧ください。

2-2 トップのリード

長内繁樹豊中市長は、子育てしやすさNO.1について、
「少子化は極めて深刻な状況で、市長就任以来、強い危機感を持っています。
この課題に対しては、国・自治体・企業などが総力をあげて対応しなければなりません。
本市においては、『こども政策の充実・強化』を重点施策として、地域の実情に合わせた子育て支援サービスを、きめ細やかに行っていきます。『子育てしやすさNO.1』の実現のため、豊中市議会に諮り、今後5年間で約100億円規模の大胆な投資を実施していきます。
子育て世代が『将来にわたってずっと住み続けたい』と思えるまちづくりを進めることで、投資の効果を子育て世代だけでなく全世代に波及させていきます。」
と表明し、プロジェクトをリードしています。
市長からのビジョンの提示に加え、「子育てしやすさNO.1」というわかりやすいフレーズとしたことにより、プロジェクトを推進していく建設的な空気が創られたと感じています。

2-3 子ども・教育分野への予算配分

現在、豊中市議会3月定例会において令和6年度(2024年度)予算案などの審議が行われています。
本市が提案している予算は、子ども・教育分野に重点化したメリハリのあるものとなっています。
これまでも、子ども・教育分野には重きを置いた予算配分を行ってきましたが、令和6年度(2024年度)予算案においては、子ども・教育分野の予算規模が約602億円となっており、3年前と比べて35%も予算配分が増えています。この額は一般会計総額の3分の1に相当します。
また、5年間で100億円規模の投資をするとした「子育てしやすさNO.1」関連の取組みには、プロジェクト初年度となる令和6年度(2024年度)に31.4億円を投じることとしています。

3.何をもって”NO.1”なのか

NO.1というけど、そもそも誰が決めるの?ランキングがあるの?豊中は今、何位なの?
このように思われる方が多いかもしれません。
結論から先にいいますと、子育てしやすさについて自治体の順位を正確に把握する術はない、というのが実態です。
全国には1,700を超える基礎自治体(市区町村)があります。
これだけの数の自治体をどのようにランキングするのか、“子育てしやすさ”という主観的な概念を相対的に評価する共通・統一した“ものさし”が存在しないことがその理由です。
また、基礎自治体というカテゴリーでひとつに括ることはできますが、そもそも自治体によってそれぞれ置かれている状況や課題が異なります。このため、仮にランキングができたとしてもその意味付けがむずかしいという側面もあるかもしれません。

3-1 民間調査のランキング

一方で、子育てしやすさをテーマにした自治体ランキングなるものが、様々な民間会社において実施され公表されているのも事実です。
その中からいくつか豊中市のランキングを紹介しますと

  • 東洋経済新報社 「子育てしやすい自治体」ランキング(2023年)
    大阪圏 8位 / 大阪府内 3位

  • 日経BP総合研究所 自治体子育てランキング(総合)(2023年)
    全国  21位 / 大阪府内 3位

となっています。
こうした民間調査結果では、まだまだ1位の背中は遠い状況です…

3-2 ”NO.1”の正体

民間調査は、それぞれの会社が独自に設定した尺度で測定、評価しているため、結果も異なるものとなっています。そもそも、これだけ価値観が多様化した社会において、みなさんが考える“子育てしやすさ”というものは一律ではなく、人によってそれぞれであると思います。

以上のことから、「子育てしやすさNO.1」は、特定の指標で相対的な順位を測定し、1位というゴールを設定しているものではありません。民間調査におけるランキングで1位の座をめざすということでもありません(かといって民間調査結果は関係ないとはまったく思いません。むしろ常に意識していくつもりです)。
私たちが考える子育てしやすさNO.1の取組みは、地域づくりであり、豊中の発展・成長につなげるという戦略のもと進めるものです。
若年層人口や市外から豊中市へ転入されてくる方々の増加など、間接的に評価する指標はいくつかあり、そうした指標もしっかりとウォッチしていきます。特に市民意識調査(2年に1回実施)において子育てしやすさに関する満足度を測定していますので、この指標は追いかけていかなければならないと思います。

NO.1とはいったい何を指し、どう評価するのか。
市民のみなさんがどう感じるか、みなさんと想いを共有できるかがもっとも重要なポイントだと考えています。
 
より多くの方が子育てしやすさNO.1に共感していただける状態。
より多くの方に子育てといえば“豊中が一番”と思っていただくこと。
これがめざすところです。
 
NO.1実現に向けた進捗については、できるだけわかりやすく、様々な観点からしっかりと説明していきたいと思います。
 
豊中市の「子育てしやすさNO.1」にどうぞご期待ください。

最後に、この「子育てしやすさNO.1」のプロジェクトは、子どもたちへの取組みを担当するこども未来部と教育委員会の職員が中心となり、およそ1年にわたって議論を重ねて創りあげてきました。
いよいよ実行段階に入ります。順次、新しい取組みがスタートし、このnoteでもご紹介していきますので、ぜひ、スキやフォローをお願いします。