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豊中の食文化に"革新の風"を起こす

豊中に住み、働き、学び、活動する人々には、素敵にかっこよく生きている人たちがたくさんいます。豊中市公式noteで連載を開始した、豊中でいきいきと活動している人にスポットをあてたインタビューシリーズ。彼らが語る「豊中で豊かに生きる力」をヒントに、読者の皆さんご自身の「生きる力の種」を見つけてほしいと願っています。

連載第2回は、豊中市民必見のサービス「豊中Supe(スーペ)」を主宰する株式会社Supe(スーペ)の経営者・清水康平さん(29歳)です。

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豊中の”飲食店の応援団長” 清水康平さん


今回の主役・清水さんは、豊中市の桜塚高校から関西学院大学を経て就職した商社時代、飲食店掲載サイトの問題に直面しました。お客様とのコミュニケーションで飲食店を利用することも多かったそうですが、メジャーな飲食店掲載サイトで探しても、とてもいいお店のはずなのに見つけられなかったり、評価や点数が低いことで候補から外されてしまったり、ということに疑問をいだいていたそうです。なんとか解決方法はないものか、という課題意識が清水さんの原動力になりました。

豊中の魅力あふれる飲食店を知ってほしい

パーマと髭がトレードマーク。超明るいキャラの清水さん

――500円で特典が使い放題!すごい革新的なサービスです。

ありがとうございます。「豊中Supe」という、豊中市内の加盟飲食店のさまざまな特典クーポンを、月額500円(※初月無料)で使い放題というサブスクリプション(定額制)サービスを展開しています。「豊中Supe」のホームページの加盟店一覧から店舗を選び来店し、「豊中Supe会員証」を提示すると、加盟店ごとのお得な特典をゲットできます。ドリンク一杯無料、一定金額以上の会計の際の特別割引、プレゼントの提供など、特典は店舗によってさまざまですが、1回のご利用で500円を超えるような特典も受けられて簡単に元が取れます(笑)。

また、季節限定の食イベントの開催や、地域のお得なフードロス情報の提供など、会員限定のサービスも充実しています。運営会社は僕が代表取締役を務める株式会社Supe。2021年7月に設立して、現在4期目になりました。今だから話せますけど、最初はかなり苦労しました。

Supeのかわいいロゴマーク

――どんなご苦労があったのですか?

「飲食店を起点に豊中を盛りあげたい!」という思いで起業したのはよかったのですが、タイミングが悪かったのです。2021年7月といえば新型コロナウイルスの影響で「まん延防止等重点措置(まん防)」が施行されていた時期です。緊急事態宣言やまん防が繰り返し出されていて、飲食店は疲弊していましたよね。豊中市内の飲食店もほとんどが休業中という状況でしたから、僕のサービスの肝である加盟店を思ったように集められなかったのです。

――コロナ禍で先行き不透明なのに一体なぜ?

元々、現在の形のビジネスプランは思い描いていたのですが、コロナ期間が想定以上に長引いてしまったという感じです。だからといってこれ以上先延ばしにするのも嫌だったので、今できることから始めようと決断し、思い切って起業しました。地元で長いあいだ困っている飲食店を見続けるのも辛かったし、自分が動くことで何か助けになれればという気持ちも決断の後押しになりました。

――起業から具体的なサービス開始まで約9カ月かかりました

加盟店舗の契約数がなんとか50店舗になり、2022年の4月にサービスをリリースしました。知り合いのお店や、元々豊中で長く営業していた飲食店にお声がけをして、僕の思いに賛同してくださった皆さんを中心にした50店舗です。ただそれでは事業の規模が拡大していきませんから、リリースから1年ほどで加盟店を100店舗まで増やして、現在は120店舗を超えるところまで拡大してきました。もちろん店舗の入れ替わりはありますが、延べ数では150店舗以上は契約してくださったことになります。十分なサービスとして機能させるには100店舗以上必要だと当初から思っていたので、ようやく土台に乗ってきたというところでしょうか。ちなみに加盟店の費用負担は一切ありません。賛同していただいた店舗に無料で加盟していただいている仕組みです。今期の目標としては、本格的に会員数を増やすことにも力を入れて、加盟店舗への集客により貢献していきたいと思っています。

――大事なことを聞き忘れました。会員になるにはどうすればいいのですか?

会員登録からサービス利用の流れはとても簡単です。「豊中Supe」のホームページから会員登録に必要な情報を入力すれば、ホームページ上で会員証が発行されます。あとはそのサイトで探した加盟店に行って、お店で会員証を提示するだけでOK。いたってシンプルな仕組みです。

利用方法も超簡単!

――当面の会員数の目標数値を教えてください。

まずは1000人を目指しています。当初は個人会員だけにフォーカスしていました。豊中市民の方に会員登録をしていただき、地域の美味しい飲食店を発見&お得に利用していただく、というサービスモデルが基本です。ただ、豊中市の人口約40万人のうち「飲食店に積極的に行く層」で「20歳以上の層」で……と考えていくと、どんどん対象者が狭まってしまう懸念がありました。

そこで法人会員制度を作って、企業の福利厚生として「豊中Supe」を導入していただき、従業員の皆さんに地域の飲食店をお得に利用していただくというサービスを今年の8月から開始しました。豊中市内の企業にお勤めの方は豊中市民ばかりではありませんし、むしろ外から通勤して来る人がたくさんいらっしゃいます。これまでは、例えば梅田経由で通勤している人は「梅田でご飯を食べて帰る」というケースが多かったと思いますが、自分が働いている会社の周りにも気になる飲食店がたくさんあることに気づいていただければ、豊中の街全体がグルメタウンのようなイメージになってくれる可能性もあるわけです。しかも、美味しいお店がさらにお得に利用できるメリットもありますからね。この福利厚生の仕組みにご賛同いただき法人契約をしてくださる企業さんも増えています。

――会員増は店舗側にとってもメリットがありますね。

飲食店の最大の課題は、売り上げ増につながる「集客」です。豊中市民の方だけでなく、企業にお勤めの方で豊中市内では飲食することはなかった方々を、新しいお客様として取り込めるようになれば最高じゃないですか。お客様もうれしいし飲食店もうれしい。まさに「豊中Supe」が地域のWIN-WINの懸け橋になるイメージです。

見るだけで終わりではなく、現地に足を運んでくれる動線づくり

――SNSでの広報に力を入れているようですね

ビジュアル重視のインスタグラムをメインの広報ツールにしています。会員からは「こんなお店が身近にあったなんて知らなかった」という声をよく聞きます。「豊中Supe」のインスタグラムでは、各加盟店舗の魅力を伝えることはもちろんのこと、イベントの案内や最新情報なども日々発信するようにしています。「魅力的なお店なのに、気づいてもらえていないから来てもらえない」という課題を解決したいんですよね。

いま「豊中Supe」のインスタグラムのフォロワー数は8600人ほどです。このうち8割~9割の方が豊中市民の方ですから、確実に市民の方とコミュニケーションが取れていると感じています。インスタグラムでは僕自身が顔出しをして直接情報発信をすることも多いんです。店舗の写真や料理の写真も、僕自身が必ず足を運んで料理を食べて撮っています。ビジュアルでしっかりインパクトを作って、「美味しそう!」「行ってみたい!」と直感的に思っていただけるようにこだわっていますね。興味を抱いた人は、必ずその店舗の情報を知りたくなるものなんです。だから各店舗にタグ付けしてそれぞれの店舗のインスタグラムにリンクして飛べるようになっています。SNS同士で連動して、見て終わりではなく、実際に現地に足を運んでくれる動線づくりを意識して、「豊中Supe」のホームページやインスタグラムを設計しているんです。

――写真から清水さんの飲食店愛が溢れ出ていますよね

本当ですか? もちろん、店舗側には「取材しますよ」「写真撮りますね」とはお伝えするものの、実は全部自前でお金を払って食べています。会員さんから「このお店どうでした?」「この料理、どんな感じでしたか?」と聞かれた時に、僕が何も答えられないのはいけないと真面目に思ってますから。「自分たちが住んでいる地域には、こんなに美味しい料理を出してくれる飲食店があるんだよ」と僕自身が語ることで知ってもらいたい、そんな一心でやってます。時々、一日に3ランチ(3店舗)取材という日もあって、うれしい悲鳴です(笑)。

――Supeという名前には何か由来があるのでしょうか?

スーペリア(Superior)という英語がありますよね。「上質な」とか「高級な」という意味なのですが、ホテルでも「スタンダードルーム」の上に「スーペリアルーム」があるように、一番上ではないけれど「ちょっといい」という感じのサービスを僕は作りたかったんですね。「最高の」「最上の」だとちょっと恥ずかしいじゃないですか(笑)。「ベストではない」けど「ちょっといい」という位置がしっくりきたんです。ただ、そのまま「スーペリア」だと硬いし、イキってる(調子に乗ってる)感が強いので、親しみやすいニュアンスが欲しかったんですね。それで思いついたネーミングが「Supe(スーペ)」という造語でした。「豊中Supe」のサービス開始前からビジネスプランは描けていたので、会社設立の際の社名も株式会社Supeとして登記しました。

「ちょっといいサービスがちょうどいいんです」(清水さん)

――サービス開始から順調に躍進していますね

今の地域横断型サブスクリプションは軌道に乗りつつありますが、本来はもう一つ、地域のフードロス削減の取り組みにも貢献していきたいという思いがあります。「豊中Supe×SDGs」として、加盟店舗から食品廃棄の情報を受け取って、即時に会員に発信することで、会員は特典として割引価格でフードロス商品の購入ができるという仕組みです。加盟店の廃棄予定品を地域に還元することで、地域の無駄のない食生活の活性化を促すことができる。運用には課題がまだまだ山積みなのですが、豊中市SDGsパートナー認証をいただいていますので、今後より力を入れていきたい取り組みです。

――ところで加盟店舗集めは誰が営業しているのですか?

自分で直接営業電話をかけたり、インスタグラムのDM(ダイレクトメール)を送ったり、営業はずっと僕が一人でやっています。ただ、最近はご紹介いただくケースがとても増えました。「知り合いのお店で聞いたんだけど話を聞かせてくれへんか?」「豊中でお店情報をもっと発信したいんだけどどうしたらいい?」とご連絡をいただけるようになってきたんです。これはちょっとうれしいですね。

――では会員数はどうやって増やしていくのでしょうか?

イベントが鍵になります。基本的には加盟店舗とのコラボイベントやフードフェスティバルなどを開催して、できるだけタッチポイントを作って会員を増やす方法が一番だと思っています。豊中市民の皆さんが普段から行っている店舗とか地元の飲食店などでも、「豊中Supe会員」でしか体験できないような特別なことをたくさん作りたいんですよね。例えばこの8月にもコラボイベントとして開催したのですが、普段は夜しか営業していない洋食バルで「会員限定の昼飲みイベント」をやりました。そういう特別な体験を目的にする場合でも、会員になってくれるモチベーションが上がるようです。明らかに、月額500円で割引特典を主に求めている会員層と、Supeじゃないと体験できない希少価値の高いイベントを求めて会員になってくれる層と、2層の会員群が存在するんですよね。後者のファン層を増やせるのが、まさにイベントなんです。

――昨年話題になったフードフェスティバルもその一つですね。

昨年(2023年)の10月22日に豊島公園で実施した「豊中Supeフードフェス2023」には、快晴だったことも手伝ってなんと1万人以上の方が来場してくれました。当初の見込み人数は3千人だったので、3倍以上の来場者数という結果になり、僕自身も驚きました。実は運営はてんてこまいでたいへんでしたが(笑)。特典は「会員証を提示してくれたら会場で使える500円券を配布します」というだけだったのですが、実際、このイベントで会員数も増えましたし、半年以上かけてイベントの準備をしてよかった!と思いました。味をしめて今年の4月に開催したフードフェスは大雨が降ってしまって散々でしたが、それでも2千人の来場者がありました。雨のなかのインスタライブを見て「感動しました」とわざわざ声をかけてくださる方もいらして、うれしかったですね。イベントの動員は天候に左右されて予測がつかず難しいのですが、次回は会員特典も種類を増やした形で実施したいと思っています。

――今年は秋にも開催するのですか?

はい、やりますよ! 10月6日(日)に豊島公園にて「豊中Supeフードフェス2024秋」を開催します。もちろん、会員でなくても参加できますので、皆さんにぜひいらしていただきたいですね。それと、晴天を祈っていてください(笑)。イベントの詳細は随時インスタグラムで発表していきます。

豊中Supeフードフェス2024秋開催の喜びを全身全霊で表現する清水さん

温かみのある循環が、フードロス解決の理想

――清水さんが目指すフードロス削減とは?

飲食店掲載サイトで評価が高くないがために、地域の美味しいお店が埋もれていくのに疑問を抱いたところから、僕のビジネスプランが始まっているんです。地域の美味しいお店を活性化したいという思いの裏には、実はフードロスに対する課題意識が原点にあります。フードロスの原因の多くは、お客さんが来ないから売れ残ってしまうという構図です。お店の集客力を改善することが、お店もお客さんも地域もみんながハッピーになると考えているのです。

――でも、清水さんの事業では「フードロス」を前面に出していませんよね。それは何か理由があるのですか?

別に戦略的にそうしているわけではありません。本来、フードロスは「ない」のが一番なんです。だからフードロスを前面に出すのは僕の本望ではないんです。「求めている理想の姿になっていない」と言っているようなものですから。変な話、フードロスに積極的に取り組んでいる店舗があるとすると、見方によっては「あの店はフードロスが多いらしいよ」と消費者にネガティブに映ることもあるんです。ブランディング戦略上も、フードロスを声高に言う店舗や企業は、実はあまり多くない。

――フードロスの解決の糸口はあるのでしょうか?

ある店舗でフードロス商品が発生している状態をポジティブに捉えると、その店舗に足を運んで廃棄予定品を素早く購入したいという人達が動くという状態ですよね。「あの店舗ではこんな商品が余っているようだ。それなら買いに行ってあげよう」というような、温かみのある循環の状態が一番理想的です。地域全体の取り組みとしてそんな環境を作りたいと思っているんですよね。ただ単に値段が安いフードロス情報が出てるから買おうというのではないんです。「豊中Supeの加盟店舗でフードロスの情報が出ているあの店、前に行ったことあるな。とても美味しかったから、ロスになる前に買ってあげよう」というような温かみのある循環が生まれれば、地域のフードロス問題の解決に繋がっていくのではないかというのが僕の理想です。現状ではまだまだほど遠いですが、近い将来、そうなればいいなと思っています。

――「温かみのある循環」をもう少し言語化していただけませんか。

価格ではなく感情で動くということです。最終的にはフードロス商品が100円高くても売れるような状態ってすごくいいなと。つまり「応援」ですよね。安いから買うのではなくて、お店の応援として買うというのが地域の循環機能として増えていけばいいなと思っています。その店舗の常連さんだけではなくて、「豊中Supe」をきっかけにしていろんな加盟店舗に対して豊中市民がフードロスを応援できるような、そんな環境を作りたいですね。それが「飲食店を起点に豊中を盛りあげたい」という僕のミッションにも繋がっていくと信じています。

――熱い思いを語っていただき感動しました。最後に「豊中Supeフードフェス2024秋」のPRをどうぞ!

開催日時は、2024年10月6日(日)11時~20時。場所は昨年と同じ「豊島公園多目的広場」です(最寄り駅は曽根)。入場無料でどなたでも参加できます。また、会員証の提示で当日会場で使用できる500円券をプレゼントするほか、優先的に並べるファストパスもゲットできます。「豊中の美味しい魅力ここに集結」と題して、たくさんの店舗による魅力的なフードフェスを企画していますので、皆さんぜひ足を運んでいただき、お気に入りのお店を見つけてください。会場でお待ちしています!

――ありがとうございました。私もフェス当日はうかがいます!

「フェスでお待ちしています!」

株式会社Supe 代表取締役 清水康平さん
豊中Supe 公式サイト(会員登録はこちらから)
https://su-pe.com/
豊中Supe 公式インスタグラム
https://www.instagram.com/toyonaka_supe/

【取材後記】
清水さんの取り組みは、2023年2月に豊中商工会議所主催のビジネスコンテストで優秀賞を受賞し、2023年度の豊中市チャレンジ事業補助金交付先にも採択されています。地元を飲食店から盛りあげて、フードロスという社会課題の解決にも挑んでいる清水さん。私も応援したくなって、すぐに豊中Supe会員になりました。全120店舗(現在)制覇を目指して、特典を使いまくろう!と思っています。次回のインタビューもどうぞお楽しみに。皆さんの日常にささやかな刺激とインスピレーションをお届けしていきますね。なお、このインタビュー記事は豊中市の情報発信を共に推進する外部人材として、たねとしおが担当しています。

【取材・文】たねとしお/1966年岩手県生まれ。明治大学文学部を卒業後、株式会社リクルートに入社。関西支社勤務時代には曽根に在住。リクルート卒業後は「男の隠れ家」出版局長を経て、現在は株式会社案の代表取締役社長。東京と京都を拠点に全国各地を取材で駆け回る。2024年3月立命館大学大学院経営管理研究科(MBA)を修了。学びのエバンジェリストとして、現在も京都大学で学びを継続しながら社会人のリスキリングを広める活動にも勤しんでいる。歌とワインとクルマが大好き。