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子育て支援をもっと身近に!「マイ子育てひろば」の取組み

「保護者ご自身に関して、子育てで悩んでいることはありますか?」
 これは、豊中市が未就学児の保護者に向けて行っている『子育ち・子育て支援に関するアンケート調査』の質問項目の一つです。
 令和5年度に実施した同アンケートでは、この質問に対して1449人から回答をいただき、そのうち5.7%が「子育てに関して話し相手や相談相手がいない」と回答しました。割合だけ見るとそれほど多くはないように思えます。しかし、この結果は約20人に1人が、子育てについて誰にも相談できずに孤立している可能性があるということであり、豊中市としては大きな課題と捉えました。

 実際、核家族化や地域とのつながりの希薄化などにより、保護者も子どもも家族以外の人と関わる機会が減っています。国の調査によると、3歳未満の子どもを持つ保護者の約6~7割がこども園などを利用せず家庭で子育てをしていること、また、自分の生まれ育った地域以外で子育てをする人が増えていることが分かっています。そういった状況から子育て家庭が孤立化し、誰にも相談できず必要な支援につながりにくくなっていることがうかがえます。
 豊中市では令和6年(2024年)6月から、孤立しがちな保護者を減らすための取組みを始めました。
 それが「マイ子育てひろば」です。
 今回はこの「マイ子育てひろば」の取組みを紹介します。


マイ子育てひろばとは

 「マイ子育てひろば」は、地域のこども園で、就学前の子どもをもつ保護者が気軽に育児相談をできるようにする取組みです。また、子育て中の人同士が交流できるよう、園庭開放・イベントなども行います。
 もちろん、これまでそういった場所がなかったわけではありません。豊中市では、公立こども園16カ所に地域子育て支援センターを設置し、子育て相談やイベントなどを行ってきました。しかしながら、アンケート調査では「自宅の近くにセンターがないため利用しづらい」「センターの利用方法や開催場所がわからない」などの声があり、利用しやすい環境づくりが課題でした。


以下は、令和5年度子育ち・子育て支援に関するアンケート調査の結果です。

◎地域子育て支援拠点事業(子育て支援センターほっぺ、地域子育て支援センター、こども園の園庭開放など)を利用していますか。
 利用している…23.7%
 利用していない…75.7%
 無回答…0.6%

◎(上記で利用していないを選択した人への質問)利用していない理由は何ですか(複数回答可)。
 時間がない…30.4%
 特に理由はない…24.0%
 サービスの利便性(立地・開催時間・日数など)が悪く利用しづらい…19.7%
 サービスの利用方法(手続きなど)や開催場所がわからない…14.5%
 そのようなサービスがあることを知らない…10.9%
 自分がサービスの対象者になるのかどうかわからない…6.7% など

 この結果から、全体の4人に1人しかセンター等の支援拠点を利用しておらず、理由として利便性の悪さや周知不足があることが分かりました。
 他方で、「これまで利用したことがないが、今後利用したい(21.8%)」、「すでに利用しているが、今後利用日数を増やしたい(16.4%)」との声もあり、ニーズがあることも分かりました。


マイ子育てひろばでできること 

 このような課題を解決するため、地域子育て支援センターを設置している公立こども園16カ所に、民間園10カ所を加えた26カ所を「マイ子育てひろば」実施園とし、利用できる拠点を増やしました。地域に「マイ子育てひろば」を設けることで、保護者や子どもがより身近なところに頼れる場所を整えました。
 また、マイ子育てひろば実施園では、園開放や育児相談の時間を週に1回以上設けるとともに、子育て講座やイベントを月1回以上開催しています。親子の交流の場と機会を充実させることで、子育て中の保護者同士で気軽に相談し合い、支え合えるような環境をつくります。さらに、育児相談では、支援が必要と思われる家庭に対しては、市のはぐくみセンター(*)と地域子育て支援センターが連携しながら適切な支援につなげます。
 そのほか、妊娠期から就学前まで子どもの年齢に応じて、子どもを連れて遊びに行ける場所や一時的に子どもを預けることのできる場所などの地域の子育て情報をお伝えしています。子育て中の人はもちろん、これから出産を迎える人も、気軽にご相談いただき、出産や育児にあたり少しでも安心してもらえればと思います。

 「マイ子育てひろば」という名称には、保護者一人ひとりに、“私の”子育て相談の場所、子どもと一緒に楽しく過ごせる場所として、これまで以上に地域の子育て支援拠点を気軽に利用して欲しいという、市の思いを込めています。

(*)はぐくみセンターとは、
 豊中市は、改正児童福祉法に基づき、令和5年4月に大阪府内で初めてこども家庭センターの機能を持つ「はぐくみセンター」を設置しました。児童福祉と母子保健の両方の観点から、全ての妊産婦、子どもとその家庭に対し、妊娠期から子育て期にわたって切れめなく、より確実に支援を届けるための機関です。児童福祉、母子保健に加え、学校教育部門、令和7年に設置を予定している児童相談所などとも連携して、全ての子どもの育ちを支え、全ての子育て家庭が安心して子育てができる環境づくりを進めています。


実施園と利用方法

「マイ子育てひろば」事業を実施しているこども園と、利用方法を紹介します。

マイ子育てひろば実施園(令和6年6月現在)
<公立こども園(16園)>
旭丘こども園・小曽根こども園・北緑丘こども園・栄町こども園・桜井谷こども園・島田こども園・てしまこども園・ともだちこども園・西丘こども園・野田こども園・服部こども園・東丘こども園・東豊中こども園・豊南西こども園・蛍池こども園・本町こども園
<民間就学前施設(10園)>
あけぼのひだまり保育園・あけぼの保育園・あけぼの幼稚園・アトリオみなみおかこども園・上野ひだまりこども園・おひさま保育園・庄内こどもの杜幼稚園・神童幼稚園・せんりひじり幼稚園・てしま保育園

利用できる人
市在住の妊娠されている方や未就学児の保護者

利用方法
利用希望園に申込書を提出し、利用登録をします。利用者カードと記念カードを受け取れば、その日から利用できます。申込書は、保健センター・子育て支援センターほっぺ・実施園にて配布しています(下記の市ホームページからもダウンロード可)。

(左)利用者カード   (右)記念カード

また、豊中市子育て・子育ち応援アプリ「とよふぁみ」から、登録した園のお知らせやイベント情報をプッシュ通知で受け取れます。プッシュ通知の設定方法は上記市ホームページ(マイ子育てひろば)をご覧ください。

とよふぁみのダウンロードはこちら


現場のみなさんに聞いてみました

マイ子育てひろばの導入に先立って、1年前から試行的に実施し登録者を増やしてきた桜井谷こども園を訪ねてみました。
この日は2歳児クラスのリトミックが開催されていました。7組の保護者とお子さんが参加されており、在園の2歳児クラスのお子さんとともにピアノの音に合わせて体を動かす遊びを楽しんでいました。

桜井谷こども園の尾西保育教諭、金村保育教諭にお話を伺いました。

(左)尾西保育教諭 (右)金村保育教諭

 マイ子育てひろばを桜井谷こども園で始める際に、「子どもにかかりつけ医がいるように、園を地域の保護者のかかりつけの子育て相談や交流の場所と思ってもらえるような場所にしていきたい」という、市役所担当者の思いを聞きました。それを意識して、マイ子育てひろばというより園として、地域の保護者のみなさん、お子さんに何ができるかを考えて取り組んでいます。
 園に”りす組””ぞう組”などがあるように、マイ子育てひろばの取組みもクラスと考え”地域組”と呼んで、主に職員2名で遊びのプログラムを考えたり、相談に応じたりしています。
 また、利用していただける時間をこちらで決めるのではなく、保護者のみなさんの日々の生活リズムの中で「ちょっと買い物に出るついでに寄ってみよう」というような形で無理なく利用していただきたいと思っています。こちらも可能な限り、その日の状況に合わせて、同じ年齢のクラスの遊びに参加いただいたり、部屋を簡易的に仕切っておもちゃなどで遊べるスペースを臨時的に作ったりと、臨機応変に対応しています。
 桜井谷こども園でマイ子育てひろばが始まって1年が経ちますが、これまでに約220組に登録していただいています。ここで接点を持った方がマイ子育てひろば以外の場で定期的に集まって交流しているというような話を聞くこともあり、とても嬉しいです。
 さらに、園に遊びに来られた保護者から「先生を見てこんな風に子どもに伝えたらいいのか」と参考になったという声をもらって職員も励みになったり、普段園では比較的おとなしい子がマイ子育てひろばを利用している小さなお子さんと関わる中で面倒見の良いところが発揮されたりと、園と地域とでお互いに良い効果が生まれていると思います。


実際に利用されている方に感想を伺いました。

>月に数回遊びのイベントに参加しています。まだ幼稚園に入る前なので、同じ年齢の子どもと関わる機会がなかなかなくて、こういう場があることで親同士、子ども同士で交流できて嬉しいです。遊びイベントは午前中に行われているものが多いのですが、午前中にこういう場で思いっきり遊んで体力を使うと、午後からのお昼寝もスムーズにしてくれるので、良いリズムで1日を過ごすことができて助かっています。これからの暑い季節は公園などで遊ばせるのも難しくなるので、引き続き利用したいと思っています。

>家だとどうしても子どもと一対一になるので、ずっと遊びの相手をしないといけなくてしんどさを感じてしまうこともあります。でも、ここに来るといろんなおもちゃがあって、お友達もいて、子どもも勝手に遊んでくれるので、親としては見守っているだけでいいということで少し気持ちが楽になります。


マイ子育てひろばを担当するこども支援課の山根さんにお話を聞きました。

>子育てしていると、日々どうやって過ごそう、これでいいのかな…など、さまざまな悩みがあると思います。マイ子育てひろばは、そんなときに、おうちの近くで子どもと過ごせて、いつでも気軽に相談できる場所と思っていただけたら嬉しいです。「こんなささいなことでも相談していいのかな?」と思っている方、どんなことでも構いません。ぜひご相談ください。
 また、園ごとのイベントの他に、子育て支援センターほっぺで行っている子育て心理講座や子育て支援コーディネーターによる相談も、マイ子育てひろばの実施園に出張し実施していきます。
 マイ子育てひろばは今年26園で開始しましたが、これからもっと実施園を増やしていき、保護者のみなさんがベビーカーを押して歩いていけるくらいの距離で、気軽に利用でき、相談できる場所として充実させていきます。


あとがき

 今回、マイ子育てひろばの取組みを取材させていただき、ちょっとしたことで保護者の不安が和らぐということを知りました。例えば、こども園に遊びにきて「おはようございます」という園の職員からのあいさつで元気が出たり、自分と同じ月齢の子どもをもつ他の保護者を見るだけで、多くの言葉を交わさなくてもその姿に励まされるという声を聞きました。そのような声を聞いて、地域に子どもと出かける場所があるだけでも保護者の支えになっているんだな、ということを感じました。
 マイ子育てひろばがあることで保護者の方が外に出るきっかけとなり、自然と地域とつながり、地域みんなで子育てをしていくという良い循環ができればと思います。

 豊中市では、昨年度から「子育てしやすさNO.1」を掲げて、市職員一丸となってこども政策の充実・強化を推進しています。未来を担う子どもたちや子育て世代が暮らしやすいまちを実現するため、今後も取り組んでいきます。

最後まで読んでいただきありがとうございました。
これからも、豊中の新しい取組みを紹介していきますので、ぜひ、フォローとスキをお願いします!

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